11月15日(土)に開催された、山梨県富士吉田市の「産地と産地をつなぐトーク企画 サンチカンサロン」に参加してきました!
7月に続いての第2回目は富士吉田のテキスタイル関係者の方をはじめ、沖縄、兵庫播州からの参加もあり、総勢53名のにぎやかな会になりました。
今回は、久留米絣制作の現場に携わる職人さんたちの言葉を富士吉田の皆さんにお届けしたい、ということで下川織物の下川強臓さんと「括り」職人の園木新一郎さん、そしてひろかわ新編集の彌永さんと冨永の4名で富士吉田に伺いました。その模様を「交流編」「見学編」の2回に分けてレポートします。
サンチカンサロンとは?という方は、第1回のレポートをご確認ください!
まずは園木さん。「久留米絣の要-括り工程について-」というタイトルで、括りの職人として働くことについて話してくれました。
久留米絣はまず糸を染色してから生地を織る先染め織物です。「括り」とは、染色の時に糸の一部を縛って防染すること。括りの工程で染め残された部分が、織った時の模様を生み出します。括りがなければ、久留米絣の独特の模様や風合いを作り出すことはできないという点で、まさに久留米絣の「要」なのです。
その要となる「括り」を専門とする園木さん。一生の仕事として伝統工芸の職人になることを選び、10年前に久留米絣の世界に飛び込みました。久留米絣だけで使われているPC連動の括り機による作業工程の説明をしつつ、黙々と機械に向かう毎日のこと、自分が括った糸が製品として使われているのを見る機会があまり無いため、仕事へのモチベーションを保ちづらいと感じること、などを非常に率直に話してくれました。
園木さんは最近Instagramでの情報発信も始めました。中間工程の職人さんが発信することで、久留米絣についてより深く知る人が増えていく、重要な取り組みだと思います。これまで他産地を見学する機会がほどんどなかったという園木さんが、富士吉田の織元さんや産地としての取り組みから刺激を受けてどんな風に変化していくのかが、とても楽しみです。
そして今回のサンチカンサロンのタイトル「工場のドアはどこでもドア」を実践している下川さんのお話へ。
ローカルに伝統を受け継ぎ、織物をコミュニケーションツールとしてグローバルに海外の人ともつながる「グローカルコミュニケーター」と自らを位置づけている下川さん。久留米絣の織元として、100年前に作られた動力織機を使って多彩な生地を生み出し、加えて海外アーティストとのコラボレーションを行うなど常に意欲的なチャレンジを続けている職人さんです。
下川さんは日々SNSでの情報発信を続けることで年間約1500人の工場見学を受け入れています。SNSでの情報をもとに久留米絣の生産現場を訪れる人はきちんと目的を持っていて、そういう人たちが工場に来てくれることで下川さん自身の興味関心と重なる人物と出会える。営業のためではなく、集客する仕組みとしての情報発信が大切だ、と考えているそうです。自分のできることを探して仕事をすることが、自身の可能性や未来を開いていくためのドアになる、と話してくれました。
続いて、お二人の話を受けてのディスカッションタイム。グループに分かれて活発な意見交換が行われていました。私のいたグループでは、括りの工程や価格についての質問が出ました。かつて富士吉田で作られていたタテ糸の部分染めの織物のことや、タテ糸を板締めで染色する技法のことなども教えていただきました。
最後に「ゆいまーる沖縄」の鈴木修司さんが沖縄の取り組みについて話して下さいました。
現場で働く職人さんに収入が回っていないこと、そういった状況を改善するためには意識改革から、ということで原価計算や販売価格の出し方などを学ぶ工房運営の勉強会を開催されているそうです。伝統工芸の産地に共通する課題に着実にアプローチしていく姿勢が印象に残りました。
繊維産業の町を盛り立てるために、様々な取り組みが行われている富士吉田市。今回訪れてみて、外部から関わっている人、移住してきた人と富士吉田の人たちとの連携がバランスよく行われていると感じました。機屋さんたちが意欲的に外からの刺激やアイディアを取り込みながら、伝統や技術を大事にしたモノづくりを行っている。そのための場のひとつがサンチカンサロンなのだと思います。
富士吉田の方から、ここ4~5年ほどで自社ブランドを運営する織元さんが増えて、自社ならではのこだわりや楽しみを持って働く人が増えてきた。その結果、以前と機屋さんたちの着るものや表情まで変わってきた、という話を聞きました。働いている人たちが自分たちの仕事の可能性を広げていくことが、産地の変化につながっていく。そんな刺激をぜひ広川町や周辺の久留米絣産地にも取り入れたい!と思うきっかけになりました。
面白い取り組みに関わらせてもらえたことに、企画の「ふじよしだ定住促進センター」と「ハタオリマチのハタ印」の皆さんに感謝します!ありがとうございました!
次回は1月。どんな発見や出会いの場になるのか、今からとても楽しみです! (冨永)
*写真提供:FRPC