第1回に引き続き、広川町立図書館スタッフのおすすめ図書をご紹介します!

※福岡県の緊急事態宣言の発出により、広川町立図書館は臨時休館しています。予約貸出に対応していますので、詳細は広川町のホームページをご確認ください。
 休館期間:2021年5月12日(水)~31日(月)

 


【梶原一美館長のおすすめの本】

 

ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド
『FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』(上杉 周作・関 美和 訳、日経BP、2019)

梶原館長:じゃあ、ちょっと毛色の変わったところで。
トランプさんがアメリカ大統領になって、これだけよくいろんな嘘がつけるなあ、というくらい嘘をついていたことで、すっかりメディア不信になってしまいましたね。
しかし、実際に私たちは、どれだけ世の中のものごとを知って判断しているんでしょうか。

例えば、世界全体で何らかの予防接種を受けている子供はどれだけいるか、いくらかでも電気が使える人はどれだけいるか、という問いを受けた時、少ない割合を思い浮かべる人が多いでしょう。実はどちらも8割に達しているんです。

この『FACTFULNESS』という本には、悪くなっているように見えるけれど実は世の中はよくなっている、ということが書いてあります。大ベストセラーで、ビル・ゲイツが新入社員に勧めた本ですね。

 

鈴木 宏昭『認知バイアス 心に潜むふしぎな働き』(講談社、2020)

では、私たちがどうしてそう思ってしまうのか。メディアの影響もありますが、もののとらえ方の〈偏り〉があるんじゃないかな、と昔から感じています。

近ごろの子供は凶暴性が増している、いじめがひどくなっている、などとも言われているけれども、少年の凶悪犯罪は年々ずっと減ってきていて、実はかなり少ないんですよね。
最近の報道にもありましたが、入所する子供が減って少年院が成り立たなくなるというぐらいに少年犯罪は減っているんです。

人々がこういった誤った印象を持っている原因には、実はとらえ方の〈偏り〉があるのではないかと考えています。
人の認知にはバイアスがかかっていて、自分が「こっちだ」と思っていることが頭の中を占めると、それ以外のことは見えなくなる。自分のとらえ方に〈偏り〉があることを自覚しておかないと、物事を正しく判断できないと思うんですよね。

その自分の中の認知バイアスについてわからせてくれる本がこれなんです。
例えば、有名な実験で、「バスケットボールの試合のパスの数を数えることに集中して動画を見ている被験者は、画面を横切るゴリラの存在には気づくことができない」というものなどが紹介されています。
この本で自分の認知の偏りに気づいてもらえるといいんじゃないかな、と思ってお勧めします。

※著者のオーラ・ロスリングとアンナ・ロスリングが運営しているWebサイト「Gap minder」(英語)もおすすめです。
世界の様々な事象について、動くグラフや写真が掲載され、データに基づきながらグラフィカルに私たちの思い込みに気づかせてくれます。  (冨永)

 

【高橋 さやかさんのおすすめの1冊】

 

しおたにまみこ『やねうらべやのおばけ』(偕成社、2020)

高橋さん:私は『やねうらべやのおばけ』という絵本を紹介します。著者はしおたにまみこさんです。
どんなお話かというと屋根裏部屋に一人で住む小さな小さなおばけのお話です。

小さなおばけは外に出るのが怖くて屋根裏部屋の中だけで過ごしています。大きくなることもできるし、小さくなることもできる。自由気ままに屋根裏部屋の中で過ごしています。
飛んだり跳ねたり遊んだり。寝るときにはいい香りのする小さなマッチ箱の中に小さくなって入って寝るんですね。

そんなちょっと怖がりのおばけなんですけれども、あるお月様がとてもきれいな晩に普段は出ない家の外に、あんまり月がきれいだから出かけるんですね。出かけるといっても家の屋根の周りをぐるりと飛んで戻るんです。
でもその短い間に、その姿を見ていた子がいまして、その翌日から静かだった彼の屋根裏部屋に奇妙なお客様がやってきて、何かを探し回っているんですね。
実は、その探し回っているのはこのおばけちゃんで…、っていうお話なんです。

今4歳になる息子がいるんですけれども、毎晩寝る前にいろんな絵本を読んでいます。この本は白黒で絵もぼんやりしていて地味な感じで、そんなに子供好みという雰囲気でもないんですが、すごく気に入って読んでくれて。
絵本を選ぶときに、子供はカラフルな絵やはっきりしたものが好み、といった先入観があるかなとも思うんですけれども、子供自身の好みもあるし、面白かったら白黒でも、昔から出版されている大人にとっては古めかしいって思うような絵本でも喜びます。
実際、この本は子供も楽しめますし、絵が繊細できれいなので大人も楽しんでいただけるんじゃないかな、と思います。

物語としてはすごく臆病で引っ込み思案だったおばけちゃんが、その奇妙な侵入者に怒って何とかやっつけようといろいろ反撃したり攻撃したりするんですが、だんだん近づいて行って、という、友達作りにも通じる部分があるお話なので、新学期が始まる4月~5月あたりに、親子で、家族で読んでほしいなという本です。

広川町立図書館は、絵本のコーナーがタイトル順ではなくて、作者の方の名前の順番で並んでいて、ある本が気に入った時に、その作者さんの本をまとめて借りやすくなっています。
そういった良さもあるので、ぜひぜひいろんな楽しみ方をしてもらえたらと思います。広川町立図書館の〈売り〉も併せてご紹介しました。


スタッフの方それぞれの視点からおすすめ図書を紹介していただきました。皆さんの気になる本は見つかりましたか?
次回からは、広川町立図書館の購入図書の選び方や、イベント、企画展示などについての〈スタッフ座談会〉の模様をお届けします。お楽しみに! (冨永)

 

【広川町立図書館スタッフによるおすすめ図書紹介】vol.1
【広川町立図書館スタッフによるおすすめ図書紹介】vol.2
【広川町立図書館スタッフ座談会―選書編】vol.1

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