織締(おりじめ)を用いて作られた〈括らない〉絣糸で織る文人絣。広川町の二つの織元さんの生地をご紹介します。

 

まずは、森山絣工房の藍染め手織りの文人絣。

小さな十字が並ぶ文様は「蚊絣」とも呼ばれています。
37cmほどの横幅に並ぶ柄を数える単位を「立ち」と言います。
小さな柄ほど織るのも難しくなりますが、織り名人の森山富子さんは「100立ち」の絣も織ったことがあるよ、と話してくれました。

次に、山下喜未輔織物の機械織りの文人絣。

喜未輔さんの祖父にあたる喜次郎さんは1930年に織締機の動力化に成功。現在も文人絣を専門にしている唯一の織元さんです。
渋くて粋な喜未輔さんの文人絣には、根強いファンがいます。

一般的な久留米絣の柄に比べて、どちらもかなり細かい柄なのがお分かりいただけたでしょうか。シンプルですが味わいがあって、身にまとうとしっくりくる。文人絣の魅力には奥行きを感じます。

久留米絣は、昭和の中頃までは筑後地域全体で作られていて、地域ごとに得意な柄がありました。広川町は「小柄」と呼ばれる、男性に好まれる柄を作る織元さんが多い地域で、その伝統は脈々と今に引き継がれています。
しかし、織締を専門に扱っていた職人さんが亡くなられるなど、産地の高齢化も進んでいます。
受け継いできたものをどう未来に伝えていくか、大きな課題に取り組んでいる織元さんたちのことをこれからもお伝えしていきたいと思います。 (冨永)

参考資料:
『久留米絣』(久留米絣技術保存会、1969)
『織の海道 vol.3 奄美・鹿児島・久留米編』(『織の海道』実行委員会、2005)

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