6月から8月まで、ゲストハウスOrigeでお試し居住をしながら、宝島染工下川織物で働き、ひろかわ暮らしを体験された西さん。

3回に分けてお届けするお話の最終回は、「クリエイターによるお試し居住の可能性」についてです。

ゲストハウスOrigeでは、以前にもスイスの方が2ヶ月間滞在し、藍染草木染手織の久留米絣工房「山藍」さんで研修されたことがあります。

また、韓国出身のビジュアルアーティストYalooさんも1ヶ月間滞在し、制作された作品を発表するイベントを2日間開催しました。

yalooのトークイベント

ファッションデザイナーの日野美穂さんは、HIROKAWA CREATORS HUBのゲストとして広川町に滞在したあとも頻繁に来てくれていて、Kibiruでのイベントに今でも協力してくれています。

一見するとアーティスト・イン・レジデンス事業のような取り組みに、私たちは積極的に挑戦してきたつもりです。

しかし、アートやクリエイティブなものを地域活性につなげようとすることは、私たちの今の力量では、扱うことがとても難しいテーマだと感じています。

どんなに優れた表現であっても、そこに適切なキュレーションが介在しなければ、単なる一過性の賑わいで終わるでしょうし、何が成果として残ったのかを説明することは困難だからです。

 

宝島染工「幕間」旧八女郡役所

これからどのように向き合っていくべきか悩んでいたときに、今回の西さんのお試し居住の話が舞い込んできました。

西さんは、大学でテキスタイルデザインを学び、就職先を探しているなかで、期間限定ではあるけど天然染色や久留米絣の機場で働きながら、広川町で暮らしたいという申し出でした。

この「移住を希望する」クリエイターからの申し出は、私たちにとって画期的な変化をもたらします。

これまでのアーティストレジデンス的な取り組みのように、純粋にアートを取り扱うのではなく、あくまで移住定住促進の枠組みで考えられるので、行政との親和性が一気に高まるうえに、成果の説明もしやすいと感じたからです。

さらに、今後の可能性を大きく開くかもしれないとも感じました。

西さんと同様にクリエイティブな人で、地方に拠点を移したい、あるいは複数の拠点を持ちたいと考える人がいれば、私たちのお試し居住事業が受け皿となり、一定期間であってもこのエリアにその才能を呼び込んで地元の人に刺激を与えたり、最終的には移住に結びつけたりして、アートやクリエイティブなものと地域活性とを両立できる可能性が見えたからです。

壁紙染色中の西さん

 

そして、報告が遅れましたが、実は西さん、宝島染工で正社員として働くことが決まりました!

正式に東京から移住することになったので、今は一人暮らしに手頃な物件を探しています。

つまり、クリエイターによるお試し居住が、本当の移住につながったわけです。これからの宝島染工での活躍が楽しみです。

私たちも、クリエイターによるお試し居住が持つ可能性について、今後も探り続けたいと考えていますので、このブログを見て興味を持った人がいれば、まずはご相談いただければと思います。

結びになりますが、今回の取り組みに多大なご協力をいただいた宝島染工の大籠千春さん、下川織物の下川強臓さん、西沙那子さんに、心から感謝申し上げます。素晴らしい機会をいただき、本当にありがとうございました!

SHARE