トーク中盤で来場者の方々に質問カードをお配りし、長さんへの疑問・質問を記入していただきました。
ここからはみなさんから寄せられた質問に長さんが答えていきます。
一気にお届けします!
「いいデザインとはなんですか?」
長:それは人によって違うから、好みで決められるものと、全体性の中でいいものもあるじゃないですか、完全に新しいみたいな。いいデザイン、かっこいいデザインとはなんですか・・・?まあなんか上がるものがいいですね、僕は。
江副:上がる?気分が?
長:はい、めっちゃいいじゃんみたいな。我を忘れるみたいな。
江副:少なくとも長くんが作ってる服は長くんがいいと思ってるものを作ってるんでしょ?
長:そうっすね。
江副:少なくとも自分がいいデザイン、かっこいいデザイン。
長:一応そうなんですけど、作品でもあり人に見せるものでもあるので、最終的に着る人の判断で全てはいいと思うんですよ、服は。
江副:まあ、着こなしっていうね、言葉もあるくらいで。
長:はい。いいデザインって、その人が好きなデザインがいいデザインですよね。要は一応僕の世界観みたいなものがあってその中で作るんですけど、服はそれが絶対じゃないっていうか。デザイナーがいい服がいい服じゃないっていうか、個人がいい服がいい服。
さっき言ったみたいに僕、家とか身体の延長線上にあるものって個人の感覚が一番大事なものだと思っていて、デザイナーが考えるテーマとかどうでもいいんですよね。全然いいし好きなんですけど、その人が気に入る価値観が大事。
僕オーダーとかもちょっとやっていて、話し合いながらデザイン決めて作ることがあるんですよ。一応フレームは自分で作ってるんですけど、結構お客さんがデザインする。それってぶっちゃけ僕がいいと思ってないものも無きにしも非ずっていうか、あるんですけど、その人が気に入ったらもういいデザインだなって。
江副:でも多分最初のフォーマット、基本のフォーマットは当然自分がいいと思ったものをやってますよね。
長:やってますね。
江副:全て僕はそうだと思っていて、作る人がいいと思ったものを世に出して、みんなどうですかって出してるのがいい商品かなと。逆にマーケティング云々っていうのは、先回りしてみんなの意見を聞きすぎて「これを統合してまとめると多分こういう商品だな」って言って誰もぴったりくる人がいなくなるっていう、そういうものづくりもあるもあったりするから。ファッションなんかは個人の感性がすごく前に出てるかなと思います。
長:そうですね、いいデザイン、難しいですよね。
「こだわりとコストの関係は?」
江副:で、あと同じ方からの質問で。こだわり抜くとね、コストと時間などがだんだん見合わなくなるんじゃないかと。
長:あーはいはい。
江副:素材選び一つにしても、そこどうですか?
長:僕はやっぱり服を作って売って生計を立ててるっていうのがあるので。生活があるからある種リミッターがすでにあるんですよ、頭の中に。コストとか時間とかが多分無意識の内にこんくらいでやらないとな、みたいな。
ということもあるし、可愛さってまたお金に還元できないっていうか、超チープな素材でも可愛いもの全然あるし。まあもちろん可愛いし素材感めっちゃいいっていうのはいいんですけど、僕はもう素材感いいっていうのはちょっと捨ててますね、正直。自分が作るものに関しては。それをやりだすともっと色々制限というか、難しくて。逆に制限があるから面白いっていうか。制限なしってどうなんだろう。
江副:微妙に妥協、譲歩はしてるっていうことですか?
長:妥協っていうか、なんだろな。妥協は全然、いろんな妥協はしてると思いますよ普通に。それが作れたら作んなくなっちゃうだろうしある意味。
江副:あー。
長:それを目指してもいるし・・・コストとか色々考え出すと妥協してる部分は全然あると思いますね、僕は。生地ももっとこういうのが欲しいけど、やっぱオリジナルで作るのはお金めっちゃかかるし。そういうのはある種捨ててて、そうじゃないところでどう作るかっていうか。
江副:実際世の中のものづくりで譲歩全然してないものなんてないですよ。
長:じゃないですか。必ずコストと時間があって。
江副:必ずあるからですね。
長:僕的に思うのは、ファッションって他者とコミュニケーションを取るためのツールだと思ってるんですよね。だから完全に自己満で作ったことは多分ない。一応自己満スタートなんですけど、やっぱり着る人もいるしそこらへんのせめぎ合いはありますけど、心の中で。そうですね、そこ、質問むずいなー。妥協はしたくないですけど、妥協したくないっていうか・・・。
江副:いろんなデザインとかもそうだけど予算、納期必ずあるじゃないですか。いかに上手な譲歩をするかっていうのが・・・。
長:あー。妥協点をうまく見つけるというか。
江副:その譲歩の点を高めればいい仕事になるっていう。譲歩しないことは本当にないので。
「どのプロセスが一番楽しいですか?」
江副:じゃあ別の質問なんですけど、ファッションのお仕事の中でどのプロセスが一番楽しいですか?
長:はーーー!どのプロセス・・・基本楽しいんですけど。
江副:(笑)例えばプランから始まって。
長:プランとかがやっぱ面白いんですかね。やっぱりぶっちゃけ頭ん中そのまま出力できるならやりたいし。それがクリエイターとかデザイナーとかの理想だと思ってて。けど現実的には色々ある中でやるじゃないですか。さっきの譲歩というのもちょっとあるんですけど。
江副:そうなんですよ。だから頭の中がそのまま形になったとしても、絶対譲歩があるからそのままは無理ですもんね。頭の中ですでに譲歩してるかもしれないし。
長:だし、面白いなと思うのは、僕、手作業の適当な感じ、「たまたま出来た系」がやっぱいいなっていうか。
江副:それアドリブってことですか?
長:アドリブっていうか、立体とか作る時、別に適当にやってるんで。一応こういうのやろうみたいなのあるんですけど。
江副:いや、だから緻密に決めて、ものすごい緻密な設計図があって・・・。
長:そういう作り方一切してないですね。
江副:ということでしょ?言葉は悪いけど行き当たりばったりで。でもこれが面白くいうとアドリブなんですよ。
長:行き当たりばったりを連続で行うのが、一番面白いんじゃないかと思うんですね。
江副:あー。
長:だからほんとは過去の延長線上で作りたくないっていうか。
江副:はいはいはい。
長:あらゆるブランド見てて、ほとんどのブランドが延長線上で作ってて。
江副:延長線って繰り返してるってことでしょ?
長:それもあるし、前の何かを引きずりながら作るっていう。全然いいんですけど、そういうんじゃなくて毎回フレッシュ、本当にフレッシュにできたら理想なんですよ。僕もそういう部分ではかなりやっぱり・・・生活もあるし。
江副:ははは!長くんから生活って聞くのもなんか味わい深いですね。
長:ややや、かなり生活は気にしてますよ。気にしてますよっていうか、これで生活してるんで。
江副:これで生活してるって奇跡に近くすごいなと僕は思ってて
長:そうなんですかね。とにかくバイトも一切してなくて。マジでヤバイって時もあって。今日売れなかったら終わるっていう。初日に五百円しかなくてマジやべえみたいになってたんですけど、まあなんとかなったといえばなったというか、うまくいったというか。
「マジでヤバイ」状況を「なんとか」してしまう長さん。
きっかけとなった海外を放浪していた時の話をしてくれました。
放浪と野宿
長:放浪をしてた時があって。その時にお金使うって簡単だなって思って。お金を使わずしてどう達成するかっていうのが遊びとして面白いと思ってて、奢ってくれる人探したりとか、泊めてくれる人探したりとか。
コペンハーゲンかどっかで流木の作品があったんですよ、道に。めっちゃいいじゃんって思って中入ったらアフリカ人が踊ってたんですよ、レゲエかけながら。なんかやべえやついるな、みたいな。そしたら手前がギャラリーになってて、そこにそいつの作品がバーっと置いてあって、奥にアトリエがあったんですよ。そいつが「ヘイメン!」とか言ってきてなんだなんだと思ったら、「アーティストなの?」って言われて。「いや服作ってて、今旅してんだよね」って言ったら、なんか作ってって言われたんですよ、君もクリエイターでしょって。いいよいいよみたいな感じで、適当にそこにある素材でマスク作ったんですよ。
江副:お面?
長:お面です。そしたらそいつがめっちゃ気に入ってくれてビール二本とつまみくれたんですよ。
江副:ハハハハハ!
長:え?マジ?みたいな。何こいつめっちゃいいやつじゃんみたいな。その時に謎に可能性感じて。いけそう、みたいな。
その時、野宿しながら放浪してて。野宿って結構面白くて、自分で天気も気にしたり。今って満ち足りてて便利だから、何かを制限するってことないなって思うんですよ。野宿してると屋根があるだけで超嬉しいんですよ。家のありがたみに超気づくっていうか。そういうことが現代なさすぎてどうなんだって思っちゃってるんですけど。
そういうことがあったんでお金なくてもなんとかなんじゃんって思っちゃってる部分があって。五百円の時とかもなんか大丈夫なんじゃねえかみたいな。ダメな時もあるかもしれないけど、楽観的な部分はありますね。
僕バルセロナで野宿してたら、野宿してると朝荷物チェックするのが癖になってるんですよ。不安なんで。で、パッと起きたら荷物がなくなってて。夢か、ってまた寝ようとするんですけど荷物全部盗まれてて。靴と靴下しかなくて。マジで顔とか叩いて「マジこれリアル?リアル?」みたいな感じ。超不安になって警察行って経緯を話したら笑われて。盗まれたら盗まれたものを書くんですよ、で、日記をつけてたノートがあったので100ユーロって書いたんですよ、僕的に価値が100ユーロだったんで。1ユーロのノートなんですけど。でも警察が「こんな高価なノートあんの?」って。「いや、思い出が詰まってて」って言ったらバカにされて、「いや1ユーロだろ」って言われて。
その時にものの価値とかお金の価値って超変わるなと思ったりして。そういう遊び、利便性とかそういうのとかも、お金を使ったら全部達成できるし。僕のことを全く知らないところでそういうの達成するって完全に個人の僕自身の・・・たまたま会ったアフリカ人もなにも僕のこと知らないじゃないですか、僕自身のリアルな価値っていうか。一切何もないとこでそういうのゲットするってサバイバーっていうか面白いなって。
そういう体験があったんで500円とかになっても、なんかいけんじゃねえみたいになっちゃってたっていうか、そういうのがあります。
「全部自分で考えて自分で製作されてるんですか?」
江副:もう一個別の質問なんですけど、全部自分で考えて全部自分で製作されてるんですか?
長:そうっすね。ま、生地は作ってないんですけど。生地とか作れたらいいなって普通に思うんですけど。
江副:生地もチャンスがあったら作りたいですか?
長:チャンスがあったら作りたいですけど、生地ってそもそも量産のものじゃないですか。量産の賜物っていうか。機械生産だし、さっきの経糸の話もそうですけど1mオリジナル作るの超大変じゃないですか。だったらたくさん作ったほうがいいものっていうか。生地作れたら作りたいけど、今はそこはあんまり考えてないですね、昔はすごい考えてましたけど。
さっきのアフターの時代に似てるんですけど、今って服も生地も余ってるっていうか。
江副:もの的にはね。
長:そう。もの的には余ってて。僕、服作ってるんですけど、服いらなくね?ってちょっと思っちゃってるとこがあるんですよね。
ちっちゃい頃から、さっきの時間の話じゃないですけど、ものの量とか考えるの面白くて。コンビニにガムめっちゃあるじゃないですか、ガムめっちゃ不思議って思って。親に「これ世界に何個あるの?」とか聞くんですよ。そこにもすでに100個とかあるじゃないですか。やべえな、みたいな。そういうの想像するのが面白いって思ってて。
服とかも60億人いるから1人1着でも60億着あるじゃないですか。でも実際にはもっとあるし、服クソあるなと思って。デザイナーいらなくね?ってなっちゃったんですよ、昔。で、作る必要なくね?あるものでどうやるかが今じゃない?って思ってて。リメイクちょっとやってるのもそれもあるんですけど。だけどオリジナルを作る面白さっていうのもあるから。だけど今はあるものでなんかするっていうのが一つ、こんだけ余ってんだからって思っちゃう時ありますよね。服作ってるんですけど、服無限にあるなって思って。
江副:例えばテクノロジーの発達っていろんな状況を激変させると思うんですけど、3Dプリンタみたいなことでテキスタイルが簡単に小ロットで単品から作れるとかなったらどうなんですかね。
長:あー。僕織物とかってやっぱ結構難しいんじゃないかって思って、3Dプリンタとかじゃ。また全然違うものならわかりませんけど。
機械化ってやっぱり効率化なんで、経糸のバリエーションとか減っちゃう部分はあるんですよね。今んところは手が最強の道具なんで。で、機械化することで効率的になるんだけど幅は超狭くなってるみたいな。手織りの感じとかを機械でやるのめっちゃ大変だと思うんですよね。
わかんないですけど織物じゃないものは作れると思います。3Dプリンタで作ってるとこあるし、服っぽいもの。けど織りの質感みたいなものをパパッとやる感じ・・・わかんない、どっかの誰かが研究してるかもしれないですけど。
江副:ですね。こっそりいうと、まだオフレコなんですけど。
長:大丈夫ですか?僕、口軽いっすよ。
江副:近くに工業系の大学があって、そこと一緒にいろいろやろうっていう話が今ちょっとあって。でもただオートメーション化するんだったら、まさにその手作りの風合いが失われることも伴うから必ずしも良いことじゃないんで、境目を探すっていうテーマでやりましょうっていう話を実は今考えてるんですよ。
長:あー。やっぱ全部バランスだなって思ってて。一番良いバランスを探すのがセンスっていうか。
江副:ねえ。やるんだったらそういうのが面白いんじゃないですかねって話をしてて。大学の方も意欲的でいてくださるので、動けば良いなとちょっと思ってるとこなんですよね。数年してそういう成果が発表できたらめちゃ楽しいなと思ってるんですけど。
長:はい。
江副:てなことでですね、時間は早くもあと10分くらいになってしまっているんですが。
長:まじっすか。後半早いな。
江副:あれだけ早く喋ったのにね。
会場:(笑)
長さんから江副さんに逆質問
「江副さんの一番楽しいプロセスはなんですか?」
江副:(質問カード以外も)会場から是非ご質問を受けたいなと思ってるんですけど、いかがでしょうか。手が挙がんないことが多いんですけど、最後は指名していったりするんです、順番に当てるとか。どうですか、なんでも結構なんですけど。
長:逆に僕が質問しても良いっすか
江副:そんな終わり方・・・。
長:えええ?大丈夫っすか、これ。
江副:いいっすいいっす。
長:僕、おととい初めて江副さんに会って、3、40分自己紹介兼打ち合わせして、結構サラっとした感じだったんですけど。やられてること面白いなって思って。僕は個人で今のことやってるんですけど、江副さんってプロジェクトでチームを作ってやる感じじゃないですか。
江副:です。毎回そうです。
長:江副さん的に一番楽しい時ってなんなのかなって。
江副:僕もね、ずっと実は楽しくて。プロデュースって仕事は最初に骨格作ったら、後は大体チームメンバーが具体化していくので。チェックはしますけどそんなに大崩れすることはないんですよ、実は。設計がしっかりしていれば。最初の一、二割のところで「わぁ仕事できた!」みたいに終わって。僕はずっとウキウキして上がってくるの待ってて、「うわぁまたこんなの出てきて!」ってずっとワクワクして。
その間に今度別のことを考え始めてて、ビジネスにも何にもなっていないプランとかもいくつか今あって。そんなのずっと頭の中で考えてる時はめちゃめちゃ楽しくて。ほんといろんなことやってるんですよ。
長:そういう待ってる時に、いい意味で裏切られる感じとかあるんですか?やっぱ。僕、ものづくりの面白さって想定の範囲外のことじゃないかなって。
江副:ありますあります。僕が気にしてることっていうのは、例えばチームにデザイナーがいるでしょ。そのデザイナーたちにデティールの指示はしないです、僕は。デティールを指示したら僕がデザインしてるのと一緒だから。
長:フレーミングだけしてるってことか。
江副:だって、絶対彼ら彼女たちの感性の方が細かいので。メモリが細かいっていうんですけど。僕は大枠のとこだけバンバンって決めて、なんかほんと鉈で切って渡してるみたいな。後はカミソリで仕上げてくれるみたいなところがあって、それはもう彼らの感覚とスキルに任せていて、だからワクワクしてんの。あ、この感じがここまで仕上がってきたぞ、みたいな。
あるいはコンセプトはもちろん守ってくれてるけど個別に考えて別のこんなやり方もあるんじゃないですかね、みたいなのが上がってきたりすると僕はすごい嬉しくて。チームを組んだ醍醐味っていうか、それは楽しんでますよ。
長:それがやっぱ人と作る楽しさっていうか。
江副:ですよ!
長:僕って自分でやってるんで自分の想定外を作るのがなかなか・・・。
江副:なるほどね。
長:そういうフレッシュさって。今は写真の友達といろいろアイディア出しとかしてるんで、お互い二人で。だから割と面白いっていうかミックスしてるんですけど。個人だとやっぱりさっき言った無意識で延長線上でやっちゃうっていうのがあると思ってて。
江副:ファッションの仲間とよく集まったりするんですか?
長:集まったりしますよ。デザイナー系、基本的にデザイナーの友達が多いんで。
江副:僕はね、特徴があるとしたらやってる仕事のジャンルが全然ないんですけど、同じ業種の人の集まりとか全く行かないですよ。
長:だからそれがやっぱいいんじゃないですかね。
江副:面白くないもん行っても。
長:そうそうそうそう、だから江副さんにおとといあった時に結構久々に違うジャンルの人にあったんで自分的に結構フレッシュっていうか、だから面白かったのかなっていうのはありますね。基本的に僕今超喋ってるんですけど、普段マジ喋んないっていうか作ってるだけなんで。独り言しゃべるくらいで、ほとんど喋んないんで。
江副:そんなに独り言喋ってたら怖いけどね。
長:いやいやいや喋んないです、そんな喋んないですけど、あんまり人と喋んないんで、会った時に喋るっていう。
長さんが最近気になるもの「作用派」
長:建築とか、陶芸とか、他のデザイナーの友達とかいるんで。そういう人たちと話すとやっぱ面白いし。最近東京の陶芸の分野で、作用派っていうのが出てきてるみたいで。
江副:え?
長:作用派。作るに用いるで作用。作用派っていうのが出てきてるみたいで。器って基本的に機能性じゃないですか、機能のものっていうか。
作用派っていうのは石みたいに、置いて、周りとか空間に対して、これがあるといい、雰囲気が良くなるってもの。それを吉祥寺のお店の人発信でそういうディレクションをして展示会とかもやってて。小林和人さんっていう人なんですけど。それは近所の陶芸の子に聞いたんですけど、それが僕が最近面白いなって思ったことで。自分は機能のあるものだけ作りますっていうよりかはどっちもやっちゃう、ボーダーレスに活動してる作家の人が出てきて、そういうのをまとめて作用派って。
(小林和人さんがやられているお店・吉祥寺にあるOUTBOUND、渋谷にあるRoundabout)
江副:へえー。
長:あ、そういうのなんか面白いなって。服って機能と装飾に分けられやすいんですけど、服にもそういう作用ってあるっていうか。無駄なんだけどあるとかわいいけど、装飾っていうか一応大きくは装飾なんだけど・・・みたいな、あるじゃないですか。だから最近それが面白いって話。だから違う人と話すとそういうちょっとした流れが聞けておもろい。
江副:あーなるほど。ちょっと自分の話で恐縮なんですけど、プロデュースは編集って、まあ大きく思っていて。今のその作用派っていうのも言葉化されたことがものすごい進歩なんですよね。
長:あー、そこなんです。僕も今そこを言い忘れちゃったんですけど、言語化することによって共感可能になったっていうか。
江副:や、全くそうなんですよ。
長:言語に落とし込んだのが超すごい発明で、それは。
江副:ですです。僕の仕事は結構、可視化の仕事がすごく大きくて。元々はコピーライターなんで、言葉にどんどんするっていうのがあって。その中で企画の段階で出てきたものが、そのまま芯になって走っていくっていうことがすごくあるんですよね。あとそれにビジュアルをつけていくとほんとに一般の人にすごい理解されて。
僕、慣れない頃は思いついた段階でみんなに喋って、こっちはすごい興奮してすごいだろって言うけどみんなピンときてないっていう、それにすごい苛立ちがあったんだけど、まあそれは言葉ができてビジュアルがつかないとなかなか伝わらないんだってことは大人になってわかってきたので。最近は早い段階でそういう風にするように心掛けてますけど。
だから例えば、ひろかわ新編集というプロジェクト名もすごい大事で。ほんとどんなタイトルがつくかで全然雰囲気が変わっていくから。「編集」なんで、絣も、テキスタイル、ファッションとつながってこういう場が設けられたりとか多分そういうことだと思うんで。これを契機におつきあいよろしくお願いします。
長:こちらこそよろしくお願いします。
メッセージ性やDIYの起点の置き場、そしてトークは終わりへ
江副:時間、もうきてるんですけど、ほんとに質問ないですか? あ、どうぞ。
質問者:長さんのこういう空間づくりも含め、ファッション以外のこういうガムテープを使ったビジュアルと服とは関係・・・あるのか?って思っちゃうようなところの分野でビジュアルにこだわってるのを見てですね、それは誰にどういうメッセージなのかなって。
長:メッセージって、そんなおおごとじゃなくて。さっき言ったようにファッションイコール服じゃないっていうのがあって。何だろうな、逆に友達であえて無味無臭の服っていうか、服だけの提案というか・・・。
江副:あーなるほどなるほど。
長:でも服って人が着るし。服だけで成立するファッションってありえなくはないんですけど、単純に服以外のものでも情報としてあげるっていうか、普通のこと、普通にやってるっていうのがあるんで。
別にそんなにぶっちゃけガムテープとかメッセージも何もないっていうか。本当はあったほうがいいんですけど、奥行きが出るというか、理論武装で実はこういう意味があって、みたいな。単純にガムテが好きなんで、ガムテ家で積んだらかわいいなと思って。
江副:でもあれでしょ、ある服を考えるときに何か面白くてそういう形になっていくじゃないですか。その面白いって感じを服以外で表すとああいう感じになるよってそういうことですよね。
長:そー、っすかね、そういうことなのかもしれないけど、あんまり、なんかそうっすね。
江副:多分それを別に計算してやってなくて、直感的にやってあんな世界ができてるのかなって僕は感じてるんですけど。
質問者:それを聞けて嬉しいなって思ったんですけど、長さんの作るものってすごい空の青がすごい出てる写真とか、フィルム特有の風合い出してるじゃないですか。そういうとこからもアーティストとしての・・・。
長:僕は一応ぶっちゃけ写真の最先端てデジタルの方でやってるのでは?と思ってて。ぶっちゃけっていうか普通に。フィルムの写真超好きなんですけど、当たり前なんですけど昔よりもバリエーション減ってるんですよ、フィルムでとれるバリエーションが。生産中止になっちゃって。
フィルムは先行世代がもうあらゆることをやっていて、僕は一応その、ネットに対するリアルっていうのがあるから、リアルな質感のが結構好きなんで。今はフォトグラファーの友達と撮るんだったらデジタルでやるんですけど、個人的にフィルムはやろうかなって。
DIYってどこに起点を置くかだと思ってて。クリエイターってみんな機械を使うじゃないですか。機械最強だなって思ったんですよ。フォトショ最強だし、Mac最強、みたいな。それがあってやるものじゃないですか。そのDIYの起点をどこに置くかっていうのは割と色々考えてて、カメラで自分が表現するんだったら、フォトグラファーには技術で絶対勝てないんで、どうオリジナリティーを出すかっていったらカメラ自体を作って撮影するっていう方法でしかないなって思ったりとか。そういう感じですね。だから織機とかも、あるものを使うっていうより、織機自体作るとこからやる方が面白いなって。
江副:新しい音楽を作ろうと思ったら楽器から作るっていうそういう話ですね。僕時々思うけど、ギターとピアノ、ものすごい人が昔に作ったもの未だに使うんだなと思うこともあったりとか。もちろんいいから残ってるっていうのもあるけど。
長:大丈夫ですか?
質問者:はい。
江副:じゃあ、時間来ちゃったので。今日はまあ長賢太郎くんに来ていただいですね、いろんなほんと、僕、さっきから思ってたんですけど、長くんて脳みそ剥き出しっていうかそれを生で見せられている感じがすごいして。
長:若い時の方が本当にやばくて、落ち着いたって言われるんですよ。
江副:(笑)ちょうどいい頃に会ったかもわかんないですね。
こういうインタビューイベントをこれからも繰り返していきます。その中でひろかわ新編集が考える未来みたいなものが浮かび上がればいいなと思うし、今俎上に載せさせていただいた伝統産業とかそうしたものも、偉そうですけどちょっと突破口を作るような新しい取り組みにつながっていけばいいなという風に思います。
では最後に、長賢太郎くんにですね、拍手でこれを締めたいと思います。若者っていつの時代も素晴らしいですね。ありがとうございました。
会うのは2回目だというのに息ぴったりのお二人でした!ありがとうございました!
長さんの今後の活動もぜひぜひチェックしてみてください。
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現在進行中のHIROKAWA CREATORS HUB Vol.2は日野美穂さんがゲストとしていらしています。
日野さんの広川での活動の様子はまた改めて報告いたします。お楽しみに🌼🌸