HIROKAWA CREATORS HUB Vol.2がスタートしています🌼
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初回のVol.1で行われたトークイベントでは、ファッションという枠を飛び越え、つくるとは、はたらくとは、など様々なテーマが浮かび上がりました。
とても刺激的な場となったため、もっと多くの方に聞いていただきたかったと思う中、聴きたかったんだけど行けなくて残念だった、というお声をいただくこともあり、トークを文章に起こしてこちらのブログでお届けすることになりました!
当日のやりとりのスピード感や熱量まではなかなか伝えきれないとは思いますが、少しでも雰囲気を感じていただけたら幸いです。

 

はじまり

 

江副:じゃあそろそろ始めましょうか。じゃあ改めて、江副と言います。昨年から始まったひろかわ新編集というプロジェクトで、僕はその総合プロデューサーを任されています。
実は長さん、長くんとは2日前に初めて会ったくらいなんですけど。なぜファッションデザイナーが、なおかつどちらかといえば、風貌から振る舞いからなんとなく分かりますけど、過激な感じの人が来てくれたかというと、今日参加者の方にもいらっしゃいますけど、広川は久留米絣の、特に生産地として知られていて。つまり絣ととても縁の深いエリアだということで。
そして久留米絣っていうのは伝統的で歴史があるんですけど、せっかくなので久留米絣自体をどうこうというよりは久留米絣を含めたもっと大きなテーマで広げられないかなということで。絣、もっと大きなテキスタイル、テキスタイルってなったらさらにファッション、みたいなところまで広げてですね。
で、どうせだったらもうインディーズ系の方も含めて、最先端のいろんなトライをしている若い人たちをお呼びしようということで考えて、ファッションデザイナーの長賢太郎さんを呼びました。ようこそおいでくださいました。

:ありがとうございます。長賢太郎と申します。江副さん、話上手いなと思ったんですけど、僕は結構早口で。

江副:そう、めちゃめちゃ早いですよ。

:本当にやばいなっと思ったらブレーキかけてくれたらっていう感じで・・・え、これもう始まってるんですか?

江副:そうなんです、じんわりとね。これから、僕も(会うのが)二回目ということで、もう一回彼の仕事、あるいはその価値観みたいなものをここで拝見したいと思います。

長さんのアトリエ

 


墨田区にある長さんのアトリエイベント当日はこの日のためだけに長さん作成の小屋がKibiruに現れました。


:じゃああの一応、あ、途中から来てくれた人始めまして。長賢太郎と申します。東京墨田区のアトリエ兼自宅で、基本的に服は全部自分で作っていて。で、これがアトリエなんですけど、まあ結構自由に変えていい物件を借りていて、天井邪魔だなと思ったら抜いちゃって。
僕はそもそも、空間とか服とか全部、個人に寄り添うものは個人がデザインした方が一番理想なんじゃないかというのが結構根本にあって。

 

江副:個々の人たちが?誰かが代わりに作ってくれるんじゃなくて?

:そうですね。身体に影響するものって、背の高さとか、自分が心地いいと思う高さとか色々あると思うんですけど、それをどう作るかっていうか。もちろんその、すごい制限とかもあるんでその中でどう遊ぶかっていうことなんですけど。
東京も空き家が多くて、この物件も不動産屋とか通さないで空き家の持ち主の人にダイレクトに「家ちょっと借りたいんですけど」みたいな感じで声かけて、家賃の交渉から自分でやって。

江副:不動産屋さんとかじゃなくて?直接?

:そうですね。そういう感じでこの物件を借りて来て。これはもう2年前なんで、結構気分で空間も変えたくなるっていうのがあって、今とは全然違うんですけど、2年前くらいはこういう状態で。

江副:これ築何年くらい?

:これは一応築70年位。東京大空襲で東京結構なくなっちゃったんで、それまでに建てられたもので。(トーク会場の)後ろに小屋があるんですが、ポップアップイベントの時も店頭に小屋を建てて滞在制作をしてて。一応完成した服をバーっと並べてるんですけど、普通に作りかけも並べてて、来た人とコミュニケーションとりながら作る、ということもやりながら。
もともと僕が旅しながら服作るの面白そうだな、みたいなことをちょっと思ってて、モバイルアトリエを作りたいみたいな気持ちが若い時あって。キャンピングカーを改造して作りたいなと思ったんですけど、キャンピングカー、買えないんで。

ファッションを始めたきっかけ

 


Kibiruで作業中 

 

江副:そもそも、どういう経緯でここまで来たんですか?最初にファッションデザインを志したきっかけみたいな。

:あーー、一応それはなんかあの、最初は高校の時好きだった子がめっちゃおしゃれで、自分やばいなと思って。地元が千葉県の柏ってとこなんですけど、結構古着屋とかがあってよく古着屋に行くようになって。古着屋さんに行くとリメイクのアイテムとか売ってるじゃないですか。それ見て、自分でできるなと思って。それでミシンのやり方とかわかんないんで、母親に家にあった家庭用のミシンを出してもらってやり方を聞いて。最初は本当にデニムをリメイクしたり、それこそユニクロとか安い服を買って改造してそれを着たりしてて。それは普通に楽しいなっていうか、そういうのがあって。
昔サッカーやってて、サッカー少年だったんですけど、中学生くらいの時にプロサッカー選手にはなれないな自分は、と思ってちょっと諦めたんです。
僕は死ぬまでに「仕事時間」とかそういうものがどのくらいあるか計算するのが結構好きで。「寝てる時間」とか、「信号で止まってる時間」とか。そういう感じでイメージして、働く時間が超長いなと思って。1日8時間で、わかんないですけど20歳くらいから70歳くらいまで50年くらい働いたら、めっちゃ長いんで。
好きなことでやっていきたいなっていうのがそもそもあったし、自分にしかできないことをしたいと思っていて、頭の中を形にするような仕事をしたいなと思っていた時にファッションにすごい興味を持ったんで、それで服作りいいなーみたいな感じで、やり始めるという感じなんですけど。

江副:それ、専門学校かなんか行ったんですか?

:そうですね。一応僕は普通の4年制大学に通っていて。その時にもうバイト代全部服に使っちゃうみたいな感じで。高校生の時は金なくて古着しか買ってなかったんですけど、高校卒業したら、ドメスティックとかインポートものも結構好きだったんでそういうものにもお金注ぎ込んでいて。途中でもうファッションやるしかないな、みたいになっちゃって。
エスモードっていう学校が東京にあるんですけど、そこに通い始めて。専門学校に夜間1年昼間2年通いました。

江副:それって基礎知識及び基礎スキルが身につく感じ?

:そうですね。基本的にエスモードの場合は、デザインの授業とパターンの授業があって。両方あって両方学ぶって感じなんで。

江副:それ、自分一人で服を作れる状態にはなるの?

:なりますね。結構普通に。でも、僕は学生の時に型紙に対する疑問がすごくて。型紙自体ってそもそも量産のためのツールというか。それを一個作っちゃえば無限に作れるというか。

江副:設計図ですからね。

:そうですね。でもなんか、服作りながらバイトしてる時に、女子大生みたいな人に「普段何してるんですか?」って言われて。「あー、服作ってるんですよね。」って言ったら、「え、服って人が作ってるんですか?」って言われて。マジっすか、みたいな。いやあなたが着てる服もそうっすよみたいに言ったら、えーっとか言って。めっちゃギャルみたいな子なんですけど、すげえ驚いてて。マジやばいなって思って。
普通にやっぱユニクロとか行って、すごいクオリティ高いものが同じ高さでバーっと積まれてるのだけ見てたら、普通にそう思っちゃうんだろうんなっていう。僕は日常的に服作ってるんで・・・。

江副:多分、同じ服作りには見えないですよね。

:そうですね。このコップとかと一緒で、プロダクト製品みたいな感じでバンバン型でできるっていうのとは違うというか。

江副:なるほど。まさに言い得て妙だけど、パターンっていうのはコピーの原型ですもんね。それを作ったらいくらでもコピーができる。

:僕のやり方って、例えば100着作ろうと思ったら100型作るみたいな感じがあって。一応ベースのパターンっていうのはあるんですけど、毎回変えたいなっていうか、変えながら作ってるっていうのがあるので。
そもそもシステム的に、量産って経済的な感じでいうとワンデザインでどれくらいお金を作れるかっていうことなので。1型作って1着1万だったら100着売れれば100万なんですけど、自分は100万円を作りたかったら1万円のものを100型作る。そういう感じでやってるというか。

江副:ものすごく雑に、というか簡単にいうとアンチマスプロダクトですね。

:なんーーーですけど・・・。

江副:それ自覚してるんですか?

:てか、僕は超ハイクオリティなマスプロダクトは結構好きで。パターンとかも、それまでに時間を費やしてるんですよ。要するに1型作るまでの先行投資じゃないですけど、時間を使ってるんですよ。
僕の場合ってそうではないっていうか、短絡的に思いつきでバッてやっちゃうみたいなところがあって。一応考えてはいるんですけど。
僕はブランド始めた時マジで30万くらいのお金で始めたんですよ。「マジヤバくねえ?」って友達に言われまくって。「いや、いけるっしょ」みたいな。自分の経済の延長線上で始めたところがあって。
量産のものづくりって、先にお金があってそういうのが投資になるんですよ、作るのにお金がかかるんで。僕は全く使えなかったんで、ある意味仕方なく、じゃないんですけど、それが楽しいんですけど。まあ、お金が超あったら違うことやってる可能性あるなって、結構思ってる部分はありますね。ちゃんとスポンサーを見つけたりとか、自分にそういう能力があれば全然違うやり方だった方かもしれないけど。必然的にというか流れ的にというか。

なぜ一人でやるのか?

 


小屋を一から製作中。イベントでのディスプレイのための植物を採集。

 

:僕は昔から同じ時間に家を出るの、意味わかんないとか思ってるタイプの人だったんで、時間とか全部自分で決めるのが好きなんですよ。自分のルールで朝起きて、というか。だから個人でやってるっていうのがあります。

江副:今ちょっといきなり核心的な話に入ってきてると思うけど、僕が今日勝手に考えてるテーマの核心。それって、例えば今もし長くんにすごい資金が何らかの形で入ってきたとする。ビッグビジネス、ビッグブランドと同じくらいの資金。そうしたら、どうする?同じようなやり方で世界に広めたいって思うか。

:多分、僕は工場を作りたいっていうか、今のやり方をどう拡大するかをイメージしてる部分があって。
僕はそもそも、ネットが普及して以降、受注生産っていうシステム自体がネットの速度に追いついていないっていうか、システムとして時代遅れとか思っちゃってるところがちょっとあって。僕が受注じゃなくてオンタイムでしか制作をしてないっていうのを説明してなかったんですけど、基本的に店頭でのイベントも即売形式でしかイベントをやってなくて。
今ってファッションショーとか色々あるんですけど、ファッションショーをやって画像とか先に見れて、何ヶ月後かに実際に服が手に取れるっていうのが、僕的には超昔のことのように思っちゃうんですね。お店に行って、新作出ましたって言われても、画像を先に見てるんで、なんかもう今更これでるんだ、みたいな。そういうタイムラグっていうのを僕は感じていて。なるべくあげる情報とものづくりまでの距離をどう縮めるかっていう。
それこそファストファッションがすごいなって思うのはそういうリンク感っていうか。普通のコレクションブランドと違って速度感があるから、ある意味すごい現代的。色々問題はあるんですけど、現代的な部分があるなって思って、普通に服を見に行ったりとかインスタ見たりとか。
僕、親が生地の仕事をやっていたんで、服を作る前から機屋さんに遊びに行っていて。そこで綜絖(※織機の部品の一つで、緯糸を通すために経糸を上下に開く器具)に経糸を通す仕事をおばちゃん、おばあちゃんがやっていて。生地を織る上で必然的にある仕事で。後継者もいなくって、という人の所に行ったりすると、この人たちが死んだら(この仕事をやる人が)いなくなっちゃうな、みたいな。
僕は自分のとこ以外でものを作るっていうことが、どんどんできなくなってるなって思っていて。今って僕が死なない限り、僕が服作ってるんでブランドとしては継続できる、生産はできるっていうのがあって。自分のところで作るのを拡大したいというのがちょっとあるんですよ。リスクだなと思って。人に頼むのって。その人が死んだら終わりっていうか。

江副:後はあの、これは僕の持論なんですけど、僕は今プロデューサーという仕事をしてるんで、編集者って思ってるんですね、プロデューサーっていうのは。いろんな要素を編集する人。
ただ、新しい方針が必要で。何でそれを思ったかっていうと、高度経済成長の頃に分業とか細分化とかがすごい進んだんですね。だからチームを組んで、それぞれあなたはこれあなたはこれって同時にやれば、一人が全部やるより効率がいいよねっていうことで多分できたの。僕はそんな風に推論をしていて。
それが高度経済成長が終わった段階、今ですよ。同じものばっかり着たくない、持ちたくないっていう人たちが増えてくるから、今度はオリジナリティが高いものが欲しがられて。それは分業でたくさん作るようなものではなかなかないので。多分、そういう流れの中で、分業化とか細分化とかに関して違うんじゃないかと感じ始めてる人が増えてきている時代かな、と思っていて。
今、長くんが言ったみたいに、ファッションの世界でもすごい完成度で、ビジネスパターンでやってらっしゃるとこもあるし、でも、それだけだとどうかな、というところがこういう若い人たちが多分本能的に感じて、自分の中で抑えきれないものを創作活動に持っていってる感じがすごくしていて。だからもう、一部混乱もしつつ葛藤もしつつ。

:混乱はしてますね、基本的に。

江副:それはすごい猛スピードで、今日色々考えて、明日答えがちょっと見えて、また言語化して、とかってやってる感じがして。実はあらゆるジャンルにこういう人たちがいるんですよ、農業にもいるし。ほんとそれがすごく面白くて。だから今、変わり目かなと思っていて。だからこそ伝統的な部分も見据えつつ、こういう最先端である意味ジタバタしてるというか、すごい頑張ってる若い人たちの感覚をすごい聞いてみたいとこがあって。

:そうですね。僕的には、ネット以降感覚が色々変わっちゃったていうか。小っちゃい世界が無限に生まれるなって思って。ブログとかもそうだし、個人の世界じゃないですか、あれって。

江副:いや、ネットはほんとそうですね。大企業しかできなかったものがパソコン一つで、センスがあったら下手すると大企業を凌駕するくらいの発信ができたりするじゃないですか、今って。だからとっても面白い時代ですよ。

:そうですね。例えば20年前だったら、僕が服作っても、お店に卸したりとか雑誌に載らない限り誰も知らない。でも今って、ツイッターとかインスタとかで自分から発信できるんで、それをキャッチしてイベントとかに足を運んでくれる若い子とかもいるし、それがそもそもかなり違うなと思って。

 

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トークはまだまだ、前半戦です。
続きはこちらから。
HCH Vol.1 長賢太郎×江副直樹トークイベント②

 

 

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