「知られざる広川」と題した前回、福岡市内大学生の多くが「広川町のこと知らない」と回答したことを紹介しました。でも、その大学生に「広川町でできる体験」を示したところ、「旬の果物狩り」「果物スイーツ」「八女茶」「くるめ絣」などに「やってみたい!」という反応がみられたのです。そう、広川町は「知ったら行きたくなる」まちなのです。
(出所: 筆者作成)
では、実際住んでる人たちにとっては、どういう町なのでしょう。2020年に行った「広川町民アンケート調査」から眺めてみます。「広川町のことが好きか」という問いに対し、町民の9割が「好き+どちらかと言えば好き」と回答しました。
では、どういうところが好きなのでしょうか。下図は好きと回答した932名に自由記述でその理由を尋ね、オンラインのテキストマイニングツールで分析したものです。この分析では、文章を単語ごとに切り、頻出ワードを大きく表示、単語の種類ごとに色分けして、どのような特徴のある言葉が「好きな理由」としてあげられたかが可視化されています。
広川町が好きな理由の分析
(2020年:新型コロナウイルス感染症に負けない広川町まちづくりアンケート調査)
(出所:ユーザーローカル テキストマイニングツールによる分析、山下永子・広川町(2020)の元データをもとに、筆者作成)
これをみると、「久留米・八女・筑後市に隣接し、道路交通の便が良く、自然豊かで、果物や農産物に恵まれた程よい田舎、くるめ絣や広川まち子(ゆるキャラ)などへの愛着」による「好き」が伝わってきます。しかし、広川町を知らない人が、興味を持つようなパワーワードが、ほとんど出てきていないことに気づかされます。
大学生が興味を持った「具体的に何ができる」というイメージが「好き」と一緒に発信されるようになると、町外の人にも魅力が伝わりだしていくのに、ちょっと惜しいなという印象です。
では、どのような具体的なものを発信したらよいのでしょうか。地方創生戦略で取り組んできた、広川ならではの特徴を活かした「新たな魅力を生む」プロジェクト成果を、せっかくなので共有していきましょう。
これまで広川町は、地域おこし協力隊にクリエイターを迎え、新しい時代に合った久留米絣の表現や産品づくりなどに積極的に取り組んできました。任期が終了しても広川町で創業し、創作活動を続ける人が何人もいます。また町の果物や野菜を作った広川町グルメも生まれています。テキスタイル文化の拠点Kibiru、ゲストハウスOrigeもできました。この「ひろかわ新編集」では、そういった活動をこれまでもたくさん紹介してきています。
でも分析図のように、町全体での新たな魅力の共有や活動の広がりが今一つのようです。次回は、その理由や背景を探り、課題を見出したうえで、今後の広川のまちづくりについて考えていきたいと思います。