「“ひろかわ”で作るひとびと」連載シリーズ

初夏を迎えたころ、太陽をたくさん浴びて様々な農産物が成長していきます。その中でもこの季節といえば桃です。ピンク色に染まった食べごろを迎えた桃がスーパーにも並び始めます。

今回は、広川町にある観光農園「ピーチの森」の古賀雄樹(こがゆうき)さんにお話を伺いました。「ピーチの森」では、広大な敷地の中に、「桃」だけでなく「有機栽培で育てたびわ」や「葡萄」も作っています。6月に向けて桃の収穫が始まるとのことで、桃の収穫に合わせて農園を見学させていただきました。

ピーチの森になるまで

先祖代々の農家家系に生まれた雄樹さんはお姉さん2人がいて、末っ子長男。正直自分が農家として何代目などということはわからないし、先代である父もわからないだろうとのこと。ただ、6〜7年前に経営主として先代から代変わりし、農園を以前の「ゆうちゃんファーム」から現在の「ピーチの森」と称したのは雄樹さんご本人でした。農家の息子という宿命で、幼いころから手伝いをしていることは多かったですが、いやいやながらにやっていたため農家を継ぐという意識はありませんでした。ご自身は服飾関係に興味があったため21歳くらいまで町外に出て服飾関係の仕事をしていたそうです。その仕事を辞めたことをきっかけに、何をしようかと思った時、実家の農家を手伝うようになりましたが、当時は給料制で手伝っていたためなかなか農家としての本腰は入りませんでした。その気持ちのスイッチが変わったのは農園の名義変更。農園の名義が先代から自分に変わり経営主になった時、仕事としての身が入り始めたとおっしゃいました。自分がやっていかなきゃという気持ちになったそうです。お話を聞いていて「ピーチの森」と名付けたのもそういった意識の表れだったのかなと感じました。雄樹さんは今考えると、農園の仕事は自分の性格に合っていると言います。繁忙期は確かに忙しいが、そうではないときのメリハリや自由さもあると言い、気苦労や大変さはないですかという質問には、なるようになるさと思っていると言います。その答えを聞いたときに、この心の軽さが観光農園として今までとは違う1歩を踏み込んでいくための勇気と柔軟性になっているのだなと感じました。

桃のオーナー制度

「ピーチの森」はもともとは観光農園ではなく、観光農園になる過程としては桃のお花見をしたのが始まり。桃は、春先に桜や桃の花に似た桃色のかわいらしい花が咲きます。20数年前は、桃の花が咲くころに農園を解放し、入園料をいただいて花見を行っていました。当時は、花見のみで、果物の販売はしてませんでした。次第に時代の流れの中で新たに農園での果物の販売へのチャレンジや、労働時間の平準化を図るために桃の品種を植え替え本格的に桃のオーナー制度を取り入れながら観光農園へと展開していきました。オーナー制度を本格的にやり始めた理由の一つが、雄樹さんの父である先代が、たくさんの人と繋がりたいという思いが強かったからともおっしゃいました。先代は旅行にいけばそこで知り合いを作り、話が弾み、のちにお相手から贈り物が届くなど、息子ながらにすごいと思うほどの営業マンだそう。そんな風に始まった桃のオーナー制度は、1つの桃の木から4本の主枝が出ている中の1主枝ごとを1オーナーへ提供しています。その1主枝から取れる桃は平均して30個ほどで、桃の成長過程を考慮すると収穫時期の10日間〜2週間の間に3回に分けて収穫してもらうのがベスト。短期間に数回に分けて収穫することを勧めているため、いまのところオーナーは県内の方がほとんどだそうです。近隣の方は毎日来園されて、桃の熟れ具合を見ながら食べたい分だけ収穫する方もいるそうです。来園してもらって自分で収穫をしてもらうことができ、多少の傷があっても大事に持って帰るオーナーさんが多いと聞き、農園の労働力の軽減としてもフードロスの観点としても良い制度だなと感じました。まだ、オーナーを募集している木はあるそうで、1年契約でもお試しにいかがでしょうか。

観光農家として

「ピーチの森」では観光農園として旅行会社などと提携し桃の食べ放題バスツアーなども行っています。そういった話を聞き、私から見ると「ピーチの森」は自ずと広川町のPRを担っていると感じていることを伝えると、まだまだそこまでの意識は持ててないそうです。農園に訪れてくれた方々に楽しんでもらうためという気持ちで、その場で果物をジュースにしたりスイーツの展開なども考えているが、現状は設備条件が揃えにくいことや店舗を持つにしても果樹は季節もので「ピーチの森」では秋〜冬の農作物がないということももあり模索中だと言います。

また、広大な土地を所有しているため、これから先でてくる問題に人手不足もあります。今は先代の父母がお手伝いとして働いてくれていますが、その二人が欠けてしまうと今のような作業労力は維持できないためやれることも限られてくるだろうと考えています。道の駅など地場産物として出荷ができるような場所ができ、売り上げを見込めると労働力を雇うことができるのかもという思いも吐露しつつ、当面は今自分たちでできることで、観光農園として来園してくれた方に楽しんでもらえるよう品種の調整や農地の調整を考えていきたいと語ってくださいました。

ちょうど収穫時期だった桃を1ついただき、そこで早速ガブリ!。。甘〜い!美味しい!もともと果物好きで、中でも桃は上位争いするほど好きな私にとっては至福のときでした。見学にいったときはちょうどバスツアーの方々が桃の食べ放題に来られていて、皆さんも美味しそうに頬張っていました。最高で10個以上食べた方も過去いたそうです。そのくらい旬の採れたて果実は美味しいですね。まだ桃のオーナーになれるとのことなのでこの味を味わってみたい方はぜひ!私も絶賛悩み中です・・・(染矢)

 

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