【森山絣工房さんでの天然藍建て】

先日Origeの畑で藍の葉を育てて藍染することを目指している誠さんに誘われ、久留米絣の工房・森山さんにて天然藍のスクモの藍建てを始める様子を見学させてもらいました。
これまでも久留米絣のいくつかの工房で藍建てについてお話を伺ってきましたが、実際に空の藍がめから藍建てを始めるところを見れ、そしてほんの少しだけ、作業を手伝わせていただいた貴重な体験でした。

久留米絣の多くの工房の藍建てに使っているのは徳島産の天然阿波藍のスクモ(藍染の原料)で、昔ながらの藁で作られた袋に入っていて、見た感じは少し青みがかかったこげ茶色の土のようでした。スクモは一袋(森山さんは一俵と呼んでいました。)20kgくらいはありそうな重さで、今回大体一袋半を2つのかめの藍建てに使いました。

大まかな工程は、スクモを発酵、そしてアルカリ性を強めるために
森山さんでは灰汁、スクモ、日本酒、貝灰の順にかめに入れていきました。
日本酒を入れた後のかめの中は、まるでシュワシュワとコーラフロートの表面の様でした。

とても簡単な工程説明になってしまいましたが、実際は、それぞれの材料、入れ方、入れる分量など、一つ一つポイントや塩梅があり、また徳島のスクモはとくに貴重で高価な原料とお聞きしたので、私たちが見学・お手伝いさせていただく間、染め場には緊張感があったように思います。
特に印象的だったのが日本酒を入れる際に、”心”という字を描くようにかめへ入れてくださいとおっしゃっていたことでした。さらに藍建てを始めるのは大安の日、など全体的に一つの儀式のようにも感じられました。

さらに藍がめの温度調節も重要で、工房のかめが埋まっている床下にはロウカス(和ろうそくの絞りかす)があるそうで、かめが一定の温度で温まる仕組みになっていました。(ライトを照らしてちょっとだけ床下も覗かせてもらいましたが床下の仕組みの全貌はまだよくわかりません)

見学後に森山さんにコーヒーを入れていただき、少しお話を伺いました。
一度藍建てが始まると毎日混ぜる作業をしながら様子を見て、調整が必要なため泊まりがけで家を空けることがなかなか難しいそうです。
糸から染める絣の織物がとても手間のかかる沢山の工程があることは広川町に来てよくわかってきましたが、その糸を染めるための藍染液を準備するにも相当な手間と昔ながらの手仕事の知恵が詰まっているのだなと感じました。

帰り際、ご自宅のお地蔵さんの横に植えられた梅の木に、蕾や小さな花を見つけて春が近づいているのだなーとちょっとほっこり、と同時にちょうど去年の今頃広川町に越してきたなー、また季節が巡ってきたなー、と時間の流れを感じました。

(綿貫)

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