「広川町とその周辺地域のリソースを旅させる」をコンセプトにした綿貫のプロジェクト”Bon Voyage (ボンボヤージュ)”で、宮崎在住のフランス人バッグデザイナー、クレモンティーヌ・サンドネールさんを招待し、アーティストレジデンシーを企画しました。

10月下旬から約1ヶ月半、まず広川町と久留米絣をはじめとするリソースを知ってもらい、現在クレモンティーヌさんはKibiruで久留米絣を使ったバッグコレクションの制作をしています。そして来週はいよいよレジデンシーの終盤、週末の二日間にお披露目会をKibiruで開催します。お披露目会に先立って、彼女のバックグラウンドや制作についてインタビューシリーズ2回目です!

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クレモンティーヌは2016年に自身で立ち上げたブランドMIKAN BAGSで帯や着物を使いバッグの制作販売をしています。
来日して間も無くの頃、日本のフリーマケットに行った時、畳んで並べてある着物や帯を見て、はじめ布地がそのまま売っているんじゃないかと思ったそうです。確かに帯は30cm幅くらいの厚めの細長い布だし、着物も広げてみて縫ってある服だとすぐわかったけれど、ほとんど布地に近いなと感じたそうです。
基本のパーツが長方形の袖と、身頃のみのシンプルさ、そして直線の縫い目を解いていけば、生地として再利用がとてもしやすい。元から後でサイズを変える、再び布に戻して使える、長く着ることを想定して設計されたような衣服だと思ったそうです。

また直線的な形の衣服は日本の着物以外にも、様々な民族的な服があり現代でも着られているけれど、クレモンティーヌは着物の形に他の直線的な衣服にはない、洗練された何かを感じるそうです。クレモンティーヌがファッションを学んだフランスでは服のデザインの基本は体に沿わせたシルエットで、それに合わせて布地をカットします。そうすると解いても布は直線的にならず、再利用できる部分も限られます。
新しく知った着物の形には、ものを大切にする考え方が大胆に表現されているなと、どんどん着物をはじめとする日本の衣服に興味が湧いたそうです。
ちなみに彼女は作るだけでなく、自ら日常的に羽織を着ていて、宮崎では着付けの先生に個人レッスンも習っているそうです。次回広川町に遊びに来るときは、ぜひ自分で着付けをして着物で過ごしてもらいたいです!

そして次は柄についてです。
クレモンティーヌは現在日本語を一生懸命学んでいますが、特に文法や漢字がむずかしい・・と時々こぼしたりしています。
ただ、帯や着物によく使われるような古典的な柄の話についてとなると、目をキラキラさせて
柄の名前や、柄の中で使わている、扇子、太鼓、鞠、などなど、沢山の古典的なモノの単語を知っていたりします。柄の名前はまず本で調べて覚えていくそうですが、一番覚えやすい方法は、自分が住んでいる場所やどこかに出かけた時に、柄として見たモノや風景を実際に見つけた時で、それから名前を調べると忘れにくいと言います。

例えば広川町で訪問した野口織物さんの久留米絣には、提灯の柄を沢山見つけたそうで、お隣の八女に行った時に提灯屋さんを見つけ歴史を知って納得し、「Chouchin」という名前をメモしていました。九州に来てからは、見つける着物や帯の柄を、日常でも見かけて覚えることが多い気がすると言います。
以前住んでいた京都では、観光者向けも含め着物も柄も、古典的なモノや風景も街中に溢れていましたが、ありすぎると思うこともしばしばあったそうです。ちなみに京都で最終的に目がいくようになったのは地元住人が来ている色数が少ない落ち着いた雰囲気の着物柄だったそうです。反対にカラフルで華やかな柄の着物の日常使いが案外難しいこと、それが所有者が手放し蚤の市で簡単に手に入る理由の一つなのかな、と思ったそうです。

一番好きな柄を聞いたところ、「雲の中に松の枝がある柄」との答えでした。
調べてみると雲の輪郭の中に様々なモチーフを配置する柄を”雲取り”と呼ぶそうです。
どんな文化でも自然は柄を描く時の主なインスピレーションですが、クレモンティーヌは日本の着物や帯柄には自然の風景が、そのまま平面的に描かれていて、さらに配置のセンスが空想的で、柄と柄の間の”間”が面白く、惹きつけれると言います。
さらに着物の柄を知ることは、着る機会や季節を意識したり、着物を着る上で帯などとの組み合わせをするのに役に立つし、何よりも多くの日本文化が学べて、デザインの勉強にもすごくなると言います。

お披露目会当日は、クレモンティーヌが今回の広川町滞在で見つけた久留米絣の柄について、
さらにお話をする予定です!

(綿貫)

photo shooted @kyotohorenjitemple

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